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2011/09/27 update
国内販路の拡大と海外展開を狙う、老舗瓦メーカーの挑戦。
住宅の変化に合わせて瓦も変わる
江戸時代から続く日本の瓦の三大産地、三州(愛知)・石州(島根)・淡路(淡路島)。なかでも三州瓦は国内58%の生産量を誇っているという。三州とは愛知県三河地方のこと。
瓦でできたネコとニワトリがお出迎え
三州瓦は現在の高浜市、碧南市、半田市を中心に作られていて、三州野安はその高浜市にあり、間もなく創業100年を迎える老舗。老舗の瓦メーカーと聞くと、伝統の技を引継いだ職人さんたちが寺社仏閣や純和風住宅の瓦を作っているようなイメージを抱きがちだが、三州野安はちょっと違う。
もちろん伝統的な和瓦は作り続けている。だが現在は、スタイリッシュな南欧風デザインの瓦や環境に配慮したエコ瓦の開発製造に力を入れている。
たとえば、"エコハート"は名古屋工業大学との産学連携によって生まれたエコ瓦の新商品。
「太陽光を高反射し、室内温度の正常化を図ることでヒートアイランド現象の緩和と光熱費の削減をめざしています。生活環境への配慮にとどまらず、地球環境への配慮を目的として、名古屋工業大学と共同で研究し、開発しました。」と話してくれたのは、総合企画室 室長の野口さん。
節電にも貢献
「瓦は住宅の部材のひとつ。住宅の変化に合わせて変わっていく必要があります。近年の住宅は洋風のデザインが多いので、その屋根に使用される瓦も平板と呼ばれる洋瓦が主流。全国的な生産割合を見ても7~8割は洋瓦で、当社の場合はさらに割合が高く9割が洋瓦です。」
たしかに街で見かける新築住宅のほとんどが洋風だ。屋根はあまり意識したことがなかったけど、たぶん洋風の瓦が載っているのだろう。
「そうなんですよね。一般的にあまり意識されてないんですよね…瓦は。家を建てる時も外観のデザインや内装にこだわる人は多いけれど、屋根までこだわる人はあまりいない。ハウスメーカーに提案された屋根材の中から値段と色で決めてしまう方が多いんです。」
瓦は建築部材で、住宅の一部としてハウスメーカーの手によって市場に届けられるため、商品の開発はハウスメーカーの意向を優先せざるを得ない。営業の浮辺さんは、それを肌で感じている。
「どんなにデザインが格好良くても、安全性・耐久性が高くても、コストを抑えることができなければ受け入れてもらえない現実があります。新商品を開発したけど、結局売れずに終わってしまうこともありました。さらにマンションなど、屋根に瓦を使わないタイプの住宅が増えていて、国内での需要は年々減少傾向にあるんです。」
原因は景気の低迷にもあるだろう。新しい商品を開発しても、売る場面が少ないのだ。
なんとかして瓦を広めたい。当社の良さを知ってもらいたい
前述の通り、瓦はハウスメーカーを介して市場に出回る商品で、その良さを直接エンドユーザーにアピールする機会がない。
「エンドユーザーとの距離が遠い業界なんです。どうしたら、当社の良さや思いを直接伝えられるかと模索するなかで、インターネットの有効利用に気づきました。」と、野口さん。
インターネットは誰もが見ることができる。そういえば私自身、買い物をしようとする時なにかと参考にすることが多い。若い人を中心に情報収集の手段として定着しつつある。
「ホームページを立ち上げた時から、製品だけでなく施工物件の情報や環境への取り組みを紹介してきました。当時の瓦メーカーでは唯一、うちだけが施工物件を毎週更新していて、
一昨年、デザインを含めホームページを大幅にリニューアルしてからも、施工物件は毎週更新し続けています。」
三州野安のホームページ
瓦の写真を見せられても、どんな感じの家になるのかいまいち想像できない。「でも施工例の写真が載っていればイメージしやすく、安心して検討することができるんじゃないかと。さらに、詳しい説明やカラーバリエーションも丁寧に見せることで、直接会ってご説明できなくても、私たちの思いや商品の良さを伝えられますから。」
施工例(1)
その結果は徐々に現れてきているようだ。
「『野安の瓦を使いたい』という設計士の方が少しずつ増えてきました。エンドユーザーからのオファーはまだありませんが、『インターネットで見つけて興味を持った』という施主さんが工場を見学しにきたことはあります。また、うれしいことに日経BP社の ”採用したい建材・設備メーカーランキング” では6年連続1位(企業ランキング)の評価をいただきまして、業界内での認知度は上がってきているのかなと、今後の販路拡大に期待をしています。」
施工例(2)
本格的な海外展開へ
まずは国内シェアを拡大。とはいえ、将来を見通してみると国内の需要には限界がありそうだ。そこでさらなる市場拡大のため、海外にも本格的に目を向けることにしたという。
「以前から台湾や東南アジア各国、北米には輸出していたんですけど、現地の事情や法律の壁などの理由で伸び悩んでいました。そこで新たに中国への本格展開に力を入れることしたんです。」
目覚ましい経済発展を遂げている中国、富裕層の中には新しく住宅を建てる人や別荘を考えている人がいるという。
「上海での大規模な国際博覧会に出展したり、現地の商社にアプローチしたりと、その足がかりを築き始めています。」
中国は瓦発祥の地だが、製造法も製品もあまり発展していない。
「日本の瓦の方が性能もデザインも上」。野口さんたちはメイドインジャパンである誇りを持ち、中国進出を虎視眈々と狙っている。
メイドインジャパンの現場から
お話に続いて、瓦づくりの現場を見せてもらうことにした。事務所の横にある本社工場では、たくさんの人が働いている。
「ここ本社工場では主に、特殊な形状をした瓦を製造しています。形状が統一されている桟瓦は別工場でオートメーション化していますが、複雑な形の瓦は機械だけでは作れない。人の手による細かな作業がかかせないんです。」
雪止め
よく見てみると、平らな瓦の中に半円柱や角や出っ張りのあるもの、小さな塔のようなものもある。「屋根の端や棟のところに使う袖瓦や冠瓦です。塔のような形の瓦は立物と言って、寄棟造りの洋風建築に使われる飾り瓦の一種です。」
へぇ、住宅に使用する瓦といっても、いろんな形があるんですね。
立物
真空土練、切断・成形、乾燥、施釉、焼成などの工程を経て、粘土の塊が見事な三州瓦へと変わっていく。
高品質な瓦を大量に焼成できる
トンネル窯
機械と人の技術を駆使して。
ちなみに、高浜市には「かわら美術館」がある。残念ながら訪れることはできなかったが、駅前の「鬼広場」は見ることができた。
鬼広場
瓦で出来た可愛い車どめ
瓦の文化と伝統は、しっかりとこの街に根付いているんだなぁ。たくさんの人に支えられているんだなぁ。
なんだか街のみんなが後押ししてくれているような気がして、この鬼瓦の怖い顔が笑っているように見えた。
高浜の人々の期待も乗せて、三州野安の挑戦は始まったばかりだ。
(ゆき)
スタッフ紹介
野口 安則
【所属】総合企画室
【職種】企画、営業、システム管理、海外販路開拓
【入社年】2003年4月
【血液型】O型
【特技】歌と料理。意外と手先が器用なんです(笑)
【興味のあること】カメラ、時計、自転車
【最近気になること】SNSの活用
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どちらかといえば、とっつきやすいタイプの人間やと思います。
昨年、グループ会社の付き添いでインターンフェアーに参加。今年の4月から当社でもインターンシップを導入して、8月から新たに男女2名のインターン生を受け入れています。教育や指導など会社側の負担もありますが、なにより彼らの素朴な疑問や純粋な意見は、とても刺激になります!僕自身のモチベーションも上がるし、社内の活性化にもつながっていると思います。今後も続けていきたいですね。
浮辺 浩
【所属】営業部
【職種】営業部長
【入社年】2006年8月
【血液型】A型
【ニックネーム】鬼瓦(!)
【興味のあること】自転車、サッカー観戦
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革張りソファーで有名な、業界最大手の某家具メーカーからの転職組です。前職で培った"シンプルモダン"の商品提案を得意としています。年齢的に、新しいことに慣れるのは大変ですが、若い人のパワーは元気になりますね。女子サッカーのなでしこのように、野安の瓦が世界で認められるよう、まだまだ頑張ります!