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2012/01/05 update
作り手と受け手をつなぐ”橋渡し”
「僕たちが作っているグラフィックデザインは、わざわざお金を払って手にするものではなく自然に目に入るものです。そのため見る人によっては必要のない印刷物などを作っている時はゴミを作っているような罪悪感を伴うこともありますが、最終的にこの仕事は作り手と受け手をつなぐ大切な橋渡しだと思っています。そしてその"人の心を動かす橋"をいろんな職業の人たちと関わりながら作っていくのがグラフィックデザイナーの職能だと思います」
いい人と、いいものを作りたい
名古屋市西区の住宅街にあるデザイン会社、オープンエンズ(OPENENDS) 代表兼アートディレクターの矢野まさつぐさん。少しお話をしただけで、熱い・ブレない・ユーモアがある・媚びない・面倒見がいい・・・など、その人柄に関する様々な言葉が思い浮かんでくる。
29歳で独立し、会社を立ち上げて8年。以前勤めていた会社では、名古屋駅全体をジャックするような大がかりな広告展開や、大手クライアントの新聞広告なども多数手掛けた。しかし、自分のデザインを多くの人が目にすることに対して達成感を味わうと同時に、大きな違和感も覚えていた。
「その仕事がメジャーかどうかは、結局僕のモチベーションには全く関係なく、もっと別の満足感がどこかに存在する気がしていました。
多くの方が関わるような大きなプロジェクトでは直接クライアントと膝を突き合わせて仕事をすることが難しいので、仕事を続けていくうちにもっとクライアントとの距離が近い仕事をやってみたいという思いが強まっていきました」
事務所には表彰状や
トロフィーが並ぶ
優秀なクリエイター達と組めば、よりスムーズに仕事が流れ、よりクオリティの高いものが作れる。独立したことによって、仕事の仕方も変わっていった。広告代理店から請け負うだけでなく、直接クライアントとやりとりをし、時にはデザイン会社の枠組みを越えるほど親身に関わり合う。オープンエンズが大切にしているスタイルだ。
ストレスがあってこそ、デザインが成立する
デザイン会社としては珍しく、自社の作品展を定期的に開催。彼らのファンや友人はもちろん、以前勤めていたスタッフまで多様な人々が訪れる。
観に来てくれた人に刺激を与えたいという意気込み以上に、自分たちが一番楽しんでいるように見える。
「やっぱり"いいね、すごいね"って、褒めてもらいたいですから(笑)
仕事と平行して作品展をするには、3日連続で泊まり込んだりそれこそ死にもの狂いでやらなきゃ出来ないんですけど絶対的に楽しいですね」
作品展は今年も開催した
デザイナーを目指して東京や大阪へ出て行ってしまった人たちが、再び名古屋に戻ってきたいと思えるような会社を作りたい。名古屋のデザイン業界の中で、キラッと光る存在であり続けたい。
今後は、デザイナーを志す人や若手のデザイナーにインパクトを与えるようなイベント的要素を盛り込んだ展覧会の開催も考えている。
しかし、将来的に楽しい仕事だけでビジネスが成立していけばいいと考えているわけではない。
「アーティストのように自分の作品に値がついて食べていければ、というふうには望んでいません。あくまで人に必要とされて、人の役に立つ仕事をしていたい。 誤解を恐れずに言えば、人間はある程度ストレスや欲求不満を抱えていた方がいいと思うんです。楽しい仕事だけになってしまったら今度はそこでもストレスが溜まっていって別のはけ口を探し始めるでしょ?だからあらかじめアウトプットする場所を決めておいて、そこに向けて日々のストレスをポジティブなパワーに変換して準備しておくんです。
苦労は出来上がったときの喜びで忘れちゃうもんですし、終わってみればやって良かったと思えるので。 仕事でもなんでも文句なんか言い始めたらキリないぐらい出てくるから、常に強引に楽しんでハッピーエンドへもっていくようにしています」
自分たちの作ったものを売って得る「ありがとう」への憧れと同時に、人から依頼された仕事に対する「ありがとう」にも価値を感じるという。
デザインによって、人の暮らしがより豊かで快適になる方法を模索し続けている。誰かの手助けとして生活に存在するデザインを作ることが彼らの理想であり、目標のひとつなのだ。
恩返しの意味もこめて”育てる”
現在のスタッフは矢野さんと、入社6年目のグラフィックデザイナー・白澤真生さん。すべての仕事を2人だけでまかなっている。この2人、本当に名コンビ。
「この写真、何人もいるようだけど僕たちの写真を合成して作ってるんですよ。スタジオに衣装をいっぱい持っていって、夜中まで何回も着替えて(笑) 。これは、2人でもこれだけ分の働きをしますってことで、年賀状用に毎年撮ってます」なんてユーモアのあるデザインなんだろう。会社の温度や2人の関係性が一目で伝わってきて、思わず笑ってしまう。
矢野さんが白澤さんについて話す時は、これまでとまた表情が変わってとても楽しそうだ。「僕では考えつかないような、求めているものより一枚うわての作品を用意してくるからちょっとムカつく」と冗談まじりに評価する。
デザインのこととなれば、上下の垣根を取っ払って対等。一対一で意見を出し合う。2人のやりとりを見て「やりあってる」とヒヤヒヤする人もいるらしいが、本人たちにその意識は全くない。ディスカッションを繰り返せば、必ずお互い納得のいく場所に着地するとわかっているから。
拾ってきた石に動物の絵を
描いて作った“どうぶつえん”
「クライアントの大小に関わらず、細かい仕事も丁寧にできるこの会社は自分の理想です。最初の頃、地図を作るだけで1日かかってヘコんだこともありましたね(笑) 僕はデザインを仕事にする上でお金を稼ぐことが第一という会社で働くのが嫌だったんです。6年前、矢野のブログに書かれていた"大好きなデザインで人の役に立ちたい"という想いに共感して働きたいと思いました」
と話す白澤さんに、離れた席から「お金を第一に考えない経営者のとこで働いちゃダメだよねー(笑)」と野次を飛ばす矢野さん。しっかり聞き耳を立てていた様子・・・
未経験者を採用し自社で一からデザイナーに育てるということは、矢野さんにとって恩返しの意味もあるという。
「20代前半のころの僕は本当やんちゃで、よく働かせてもらってたなってぐらい髪型も服装も酷かった!(笑) でも、拾ってくれた会社は何も出来ない僕をちゃんと育ててくれました。その時の社長に直接"ありがとう"を言いに行けばいいんですけど、照れくさいのでデザイナーを育てるという形で感謝の気持ちを表しているつもりです」
ポジティブ・スパイラル・アップ
「アートディレクターって、国家資格や免許がない。"自称"し続けてたら死ぬまでその肩書きでいられる。でも、誰にも必要とされなくなった時点で本来は免許剥奪と同じことだと思うんです。
だから常に人から必要とされるもの、そして流行に囚われずに自分たちがいいと思うものを作っていきたいですね」
『オープンエンズ』という社名には、仕事に対する矢野さんのスタンスが込められていた。
終わりが始まりであって、始まりが終わり。つまり、終わりはない。
リズムのリフレインで音楽が覚醒していくように、ぐるぐると円を描いているうちに、その核が熱をもって高揚していくモチベーションの上がりかた。永遠とループしていくこのシステムを、矢野さんは自らの造語で「ポジティブ・スパイラル・アップ」と表現する。
この牛、松阪牛駅弁の
弁当箱だとか…
立ち上げからこだわってきたクライアントと直接やりとりを進めるスタイルを経て、昨年から再び広告代理店と組んで数々のプロジェクトに関わっているとのこと。
「目的や考え方が共有出来ていれば関わる人数が増えてもブレることはないと確信しました」
さらに来春には自社でデザインしたものを商品として製造・販売するメーカーとしての機能も携えた会社へと展開していく予定だ。
受託する仕事と、発信していく仕事。双方の柱を持った会社へ。
オープンエンズの挑戦は終わらない。
(若林)
スタッフ紹介
矢野 まさつぐ(代表取締役)
【職種】アートディレクター
【出身校】日本デザイナー学院
【ブログ】
http://blog.openends.org/
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従来のデザイン事務所のワクを軽く飛び越えるような軽やかな動きをしていきたいと思っています。自分たちの持てるスキルを精一杯活かして少しでも世の中が明るく楽しくなるようにと常に思っております。
白澤 真生
【職種】グラフィックデザイナー
【入社年】2006年10月
【出身校】名古屋芸術大学
【ニックネーム】マサオくん
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自他ともに認める「デザインのバカ」。最終的な理想は、人から喜んでもらえて自分自身も楽しく仕事ができる環境を作ること。そして、徹夜で仕事をしないで済むこと(笑)